SANJI’s smile
普段、おれの顔を見ればチンピラみたいにガンつけてくるコックが。
「どうだ、ゾロ。クソうめェだろ?」
こういう時にだけ、一〇〇%の確率でガキみてェな無邪気な笑顔を向けてくる。
クソッ、反則なんだよ、その顔。
おまえにそんな顔させる料理に嫉妬するなんざ、アホみたいなことしちまうじゃねェか。
ZORO’s smile
「サンジ〜〜、腹減った!メシ〜〜〜‼︎」
「サンジそれ美味そうだな、おれにもくれよ〜」
「なあなあ、サンジ〜〜」
無邪気というか無垢というか、ゴムの手足をぐるぐると巻き付けて全力でサンジにじゃれつくルフィを見る度に、そして満更でもない表情でルフィの好きにさせているサンジを見る度に、ゾロは尻のすわりの悪さを感じた。
(もしかして、羨ましいのか……?)
試しに、ルフィのように無邪気にサンジにじゃれつく自分を想像しかけて、ぶるりと身震いした。
想像するにもおぞましい。あれはルフィだからできることだ、断じて羨ましくなどない。強いて言えば、二人の間にある信頼感とでもいうような空気が、自分とルフィとの間にあるものとは異質である事がどことなく落ち着かない気持ちにさせるのだろう。
しかし、それなら。
「相変わらずだらしねェ顔だな、エロガッパ」
ナミのご機嫌とりをしながらクネクネと体をくねらせるコックに、ボソリと呟く。
「あぁん⁉︎だーれがエロガッパだこのバカマリモ!」
「誰がマリモだ、ヘボコック」
「てめェ、やんのか⁉︎」
「はっ、勝つのはおれだがな」
「ふざけるなーーー‼︎」
そこからは、いつもの喧嘩。
刀と蹴りの応酬をしながら、これだとゾロはほくそ笑む。
しょうもない悪口、手加減のいらない喧嘩、喧嘩の最中のどこか楽しそうな表情。
これは、おれ達の間にしかないものだ。
おれ達だけの、特別。
(おれぁやっぱりこれがいい)
そうやって時折、子供みたいな無邪気な笑顔を浮かべていることを、ゾロだけが知らない。