「終わったか?」
キュッと蛇口を閉める音を合図に、視線の先のコックに声をかける。
それには返事をせず、コックは手を拭くと新しいタバコを咥えながらこちらにやってきて、ぽすんとおれの膝に収まった。
預けられる背中の重みが心地良い。
「ん」と突き出されたタバコに火をつけてやると、なんとも美味そうに煙を吸い込んだ。
柔らかな髪を弄び、螺旋を描く眉から頬へと指で辿り、まだ長いタバコを抜き取ると甘ったるいキスを落とす。
昨日と今日の狭間で。
おれだけのものになったコックと二人、愛寵の海に揺蕩う。