今だけは春を一人占め

ことん、と肩に重さを感じて横を見ると、若草色の頭が乗っかっていた。
少し伸びた髪がシャク、と頬に突き刺さるのがくすぐったい。硬そうに見えるけど案外柔らかくて、芝生の新芽みたいだ。
耳を澄ますと、すーすーと気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。
規則正しい寝息と電車の揺れが、とろりとした眠気を誘う。
眠い、けど寝たくない。
重たい瞼を必死に持ち上げる。
肩の重さを、そこだけ一足先に春が来たような温もりを、一秒でも長く感じていたかった。自分だけのものにしておきたかった。

まだもう少し、このままで。
なんなら寝過ごしてくれたっていいからさ――ゾロ。

心の中でそう呟いて、もう一度、案外柔らかなゾロの髪にそっと頬を寄せた。

タイトルとURLをコピーしました