光芒

 男子校には、男子校のアイドルなるものが存在する。
 選ばれるのはたいていが小さくて、華奢で、可愛らしい顔立ちをしたやつだ。要は女の代わり。色気のない学校生活を少しでも華やかなものにするために、みんなして群がってもてはやして。中にはガチ恋する奴もいるらしい。
 まあでも、いくら可愛くても所詮は男。おっぱい至上主義の俺の心は動かない——はずだったのに、最近そんなアイドルの中に一人気になる奴ができた。
 
 ヤマギ・ギルマトン。この春入学してきた一年生で、今校内で一番人気のアイドル。金髪碧眼の天使のような見た目が可愛いともっぱらの噂だ。ちなみに、本人はそんな扱いが迷惑でしかないらしく常に超絶塩対応なのだが、「そこがまたイイ」らしく、本気で狂わされ、自分だけのものにしたいと手を伸ばす男が後を絶たない。もちろん、もれなくみんな玉砕だ。なぜなら。
 
(やっぱ、俺のこと好きだよなー)
 
 すれ違いざま、ちらりと伏目がちの青い目がこっちを見る。ただ見るのとは違う、明らかに熱のこもった視線。
 応えるかは別にしても、正直悪い気はしない。でも、ヤマギのことが気になるのは。その気持ちに気づいたからでも、ましてや見た目がタイプだからでもなかった。
 
(あ、また)
 
 突如として視界が切り替わる。
 いつからだったか、ヤマギからあの視線を向けられるたびに白昼夢のようなものを見るようになった。
 地球ではないらしいどこかで、揃いの制服のようなものを着た自分とヤマギが出てくる夢。場面は様々で、今のようにヤマギがそっと自分を見つめていたり、一緒に食事をしたり、巨大なロボットを前に何事か話し込んでいたり。今も、目の前に両腕に子どもをぶら下げて走り回る俺をヤマギが見守る場面が映し出されていた。
 妙にリアルな夢。これだけ何度も見るのだから、何か意味があるんじゃないかと思ってしまう。
 なんでこんな夢を見る? なんでいつもヤマギが出てくるんだ? 俺は……何を忘れてる?
 ——知りたい。その衝動が俺を突き動かした。立ち止まり、ゆっくりと振り向く。
 
「一年のヤマギ……だよな。俺さ、おまえのことすっげえ気になるんだけど」
 
 止まっていた歯車が、動き出した瞬間だった。

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