八月になり、大学は夏休みに入った。
相変わらずバイトと部活に明け暮れる日々の中の特別な一日。
今日は、あの日以来初めてサンジが家に来る日だ。
あれから間もなく、サンジはウリセンをやめた。連絡先を交換したものの、日常に追われ連絡を取る暇もなく、サンジからも特に連絡がなかったのでその後どうしているのか分からず、そろそろ連絡してみようかと思った時に「今度会えるか」とメールが来たのだった。
指定された日はちょうど部活もバイトもない日だったので、せっかくなので待ち合わせなるものをしてみることになった。
場所は初めて出会ったラブホの裏口。
ゾロが時間ぴったりに辿り着くと、そこには既に煙草をふかして待つサンジがいた。
「悪ィ、待ったか?」
「いや。おれが早く着きすぎただけだから気にすんな。しかし懐かしいなぁ、ここ」
「ほんとだな……そこの扉のとこに傷だらけで座っててさ。死んでんのかと思ってビビったぜ」
「こっちこそ、突然緑頭のゴツい奴に家来るかと言われて死ぬほどビビったっつーの」
お互い様だな、とひとしきりクスクス笑い合ってから、ポツリとゾロが言った。
「おれ、あの日のことはこの先も絶対忘れねェ」
「……そうだな」
んじゃ行くか、と煙草を消し、傍にあった袋を二つ手に取るとサンジが歩き出す。
「えらい大荷物だな。どうしたんだ、それ?」
「これか?まあ話は家に着いてからな」
「おう。一個持つから袋よこせ」
先を歩くサンジに追いつくと、袋を一つ受け取って隣に並ぶ。
季節は夏。陽が落ちかけてもまだ茹だるような暑さの中、二人はゾロの住むアパートまで並んで歩いた。
「あっちーな。すぐエアコン入れるから待ってろ」
家に着くとすぐに開け放していた窓を閉めてエアコンのスイッチを入れ、グラスにたくさん氷を入れると二人分の麦茶を注いだ。
「これ。麦茶飲むか?」
台所の前で何やら袋をガサガサ漁っているサンジの所へ持っていくと、
「サンキュ」
顔を上げたサンジはグラスを受け取るなり一気に飲み干した。
「あー、生き返る。これどうも……ってどうした?」
空になったグラスを受け取らずにボーッと見つめるゾロを、サンジが訝しげに見る。
(飲んだ……初めてこいつが、麦茶飲んだ……!)
ゾロは感動していた。だって、これまで何度出しても一度も口をつけられることのなかった麦茶を、初めてサンジが飲んだのだ。
嬉しい。こんな些細なことがすごく嬉しい。
「おーい?」
目の前で手を振られてようやく我に返ったゾロは慌ててサンジの手から空のグラスを受け取った。その拍子に、ついさっきまでサンジが漁っていた袋の中身に目が行く。
「野菜に……肉?」
袋の中には食材がたくさん入っていた。もう一つの方の袋も見てみると、そちらには鍋なんかの調理器具が。
「料理でも作ってくれるのか?」
袋の中身から導き出される結論はこれしかない。
「そのことなんだけどよ」
照れなのか頭をポリポリ掻きながら、でもゾロの目を真っ直ぐ見てサンジが言った。
「前にさ、ゾロがやりたいことないのかって聞いてくれただろ。あれから色々考えて、おれ料理がしたいって思ったんだ。それで、専門学校行く金貯めるために調理のバイト始めてさ。腕はまだ全然だけど、これまでの礼も兼ねてゾロにおれの作るメシを食ってもらいたいんだ。……ダメか?」
「ダメなわけあるか!そっか……そっか、やりたいこと見つかったのか。良かったな」
まるで自分のことのように喜んで笑うゾロを見て、サンジはホッとして思わず笑みをこぼした。
「よし!腕によりをかけて作るから、楽しみにしとけよ!」
テキパキと片付けをしてから紺色のシンプルなエプロンをつけ、サンジが料理に取り掛かる。腕はまだ全然と言いながらも鮮やかな手つきで次から次へと料理を作り出していく様はまるで魔法のようで、ゾロは飽きもせずずっとその後ろ姿を眺めていた。
「はい、お待ち遠さま」
炊き立てのご飯に鰯のつみれ汁、手作りのタルタルソースがたっぷりかかったチキン南蛮にほうれん草とえのきのお浸し、タコときゅうりの酢の物、焼き茄子。
こたつテーブルに次から次へと並べられていく料理に、ゾロの喉がごくりと鳴る。
「飲み物は?」
「とりあえずお茶でいい」
「オーケー」
氷を入れた麦茶のグラスを二つテーブルに置くと、ようやくサンジも席についた。
「これ全部作ったのか?すげェな」
「口に合うといいんだけど」
二人で一緒にいただきます、と手を合わせ、まずはつやつやと光るチキン南蛮を一口。
「……うまい!」
あまりの美味さに思わず飛び出した一言に、ゾロの反応をじっと見守っていたサンジの緊張がふっと緩む。
「そりゃ良かった」
夢中で箸をのばし、頬袋をパンパンに膨らませて皿を空にしたゾロがふと顔を上げると、ニコニコと微笑んでゾロを眺めるサンジと目が合った。
「食べないのか?」
「いや、あんまり美味そうに食べてくれるんでつい、な」
「だってこれ本当に美味いぞ。おまえも一口食べてみろよ」
ゾロがそう言うと、サンジもようやく自分の食事に手をつけた。
「ん。美味しい」
「だろ?こんなに美味いメシ作れるなんてスゲェよ。料理の経験でもあるのか?」
「経験ってほどじゃないけど……母方の祖父がレストラン開いててさ。無愛想だし、すぐに蹴りは飛んでくるしって人だけど、作る料理はすごく美味くて温かくて。子どもの頃、家で辛いことがあるといつもそこに行ってた。泣いてるおれに何も聞かずにメシ作ってくれて、そこで料理も教わった。あの不器用な優しさに、おれは何度も救われたんだ」
「そうだったのか」
「実は、調理のバイトその店でやってるんだぜ。怒られて蹴られまくりだけど、自分が作った料理でお客さんが美味しいって笑ってくれてさ……今、毎日が幸せですごく楽しいのはゾロのおかげだ。おれ、ゾロに会えて良かった。本当にありがとう」
そう言って笑った顔があまりに綺麗で。
すぐにでも掻き抱きたい衝動を、ゾロは拳を握り締めてぐっと耐えた。
だってこれは傷を癒すためじゃない。もっと別の、衝動。
「おれは何もしてねェよ。おまえが頑張ったから今があるんだろ」
「それでもやっぱり、ゾロと出会ってなかったら今のおれはいねェよ。なあゾロ。これからもさ、こうやってたまにメシ作りに来ていいか?」
「そりゃありがたいし、断る理由なんてないけど……」
「けど?」
自覚したのは最近だけど、ずっと胸の内に抱えてきたもの。
一緒に過ごす時間が増えるほど、近い未来にきっとそれを隠し通せなくなる日が来る。
それなら、どんな結末になろうとも今、自分の口から伝えたかった。
だって自分はもう、この感情につける名前を知ってしまった。
箸を置いて姿勢を正し、まっすぐにサンジの目を見る。
「……サンジ。おまえに一つだけ言わないといけないことがある」
「なんだ?」
「おれ、おまえのことが好きだ」
「…………え?」
サンジの目が零れんばかりに見開かれ、カランと音を立てて手から箸が滑り落ちた。
「別に応えてもらおうとは思っちゃいねェよ。おまえが男じゃなくて女が好きなのは知ってるしな。ただ、知っておいてもらいたかっただけだ」
それでもよけりゃあまたメシ作りに来てくれ、と清々しい顔をしてゾロが言う。
その顔をサンジはしばらく呆然と眺めていたが、やがてフラフラと立ち上がりゾロの真横にやって来て座った。
「あのさ、ゾロ」
一瞬ためらうように下を向き、次に顔を上げた時にはその目から迷いは消えていた。
「おれもゾロに言わなきゃいけないことがあるんだ」
「……なんだ?」
「おれのことを、抱いてほしい」
今度はゾロの目がこれでもかという位に大きく見開かれた。
「それは……一体どういうつもりだ?」
「ゾロのことを好きだからに決まってんだろ」
「いやだって、おまえ男は好きじゃな——」
「男でも!!好きになっちまったモンはしょうがないだろう!ゾロだから好きなんだ!!……ゾロは、そうじゃないのか?」
当たり前だ。男だから好きなんじゃない。
「おれだって!おまえだから好きなんだ……!」
衝動に突き動かされるままに、ありったけの力で目の前の痩身を抱き締めた。
サンジも負けじと抱き返してくる。
しばらくそうやって抱き合っていたが、どちらからともなく顔を上げると、ゾロはサンジの瞳を覗き込んだ。
ゾロが惹かれて止まない、美しい青が欲情に滲んでいる。
「なあ、本当にいいのか」
理性を総動員し、今にも押し倒したい気持ちを抑えてゾロが問う。
だって大事にしたいのだ。勢いに任せてではなく、大切に、丁寧に、愛され必要とされていることをその身に刻み込むようにしなければ。
「……おれに、ゾロの全部をくれよ」
耳元に唇を寄せ、吐息混じりでサンジが甘く囁く。
「だから早く、ベッド、行こうぜ」
焼き切れそうになる理性をなんとか繋ぎ止めて、ゾロはサンジを抱き上げるとそっとベッドに下ろした。そのまま頬に手を添えて、紅く色付いて誘う唇へと優しい口づけを落とす。まるで瑞々しい果汁のような甘さとわずかに残る煙草の苦味を夢中になって何度も貪り、シャツのボタンを手にかけようとしたところでやんわりと押し止められた。
「男は初めてだろ?だから今日は、おれに任せて」
「でも……」
「な、頼む」
上目遣いで、そんなねだるように言われたら断れるはずもなく。
渋々と頷いたら、起き上がったサンジに軽く押され、仰向けにベッドに倒れ込んだ。
「ゴムあるか?」
尋ねられ、ヘッドボードに置いてある箱の中からコンドームの袋を取り出す。その間にサンジはベッドから降りると自分のバッグから何やら小さなケースを取り出して戻ってきて、部屋の電気を消した。
窓から入る月明かりがほのかに部屋を照らし、サンジの白い肌が青白く浮かび上がる。その白がスッと低くなると柔らかなキスが落とされた。それから唇は頬を掠め、耳介を食んで耳のくぼみを舌でなぞり、反対側の耳へと移ると三連のピアスごとねっとりと舐る。密やかな息遣いが、鼓膜にダイレクトに響く。
ゾクリとした。
耳から背筋を順に粟立たせて駆け降りた快感が、腹の底に火を灯す。
ピクンとゾロの中心が反応した。
その間にもサンジは首筋を舌で辿りながらゾロのTシャツを脱がせると、あらわになった彫刻のような上半身をうっとりと眺め、ほうと息をついた。
「すげ……綺麗だ」
こことか、ここも。胸や腹に浮き上がる筋のスジを細く長い指がツーッと滑って撫でる度に、腹の底の熱が温度を上げていく。
でも、くすぐるようなそんな刺激じゃ物足りなくて。
もどかしさに思わず軽く突き出したそこは、一目見て分かるほどに形を変えていた。
「触ってないのに、もうこんなになってる」
ゾロの動きに気づいたサンジが視線を下にずらし、ズボンを押し上げて屹立するモノを根本からそっとなぞり上げた。
それだけで、眩暈がするほどの甘い疼きが全身を走り抜ける。
思わず漏らした呻き声にサンジが声なく笑う気配がし、ズボンのベルトに手をかけようとするのを慌てて押し止めた。自分ばっかり一方的にされるのは、どうも慣れない。
「おまえも脱げよ。カラダ、見てェ……」
少し躊躇う素振りを見せたものの、大人しくシャツのボタンを外し、ベルトを取ってズボンも脱ぎ捨てて下着一枚になったサンジの裸身が闇に浮かび上がる。けれど、月明かりが逆光になってゾロには暗い影ばかりが目についた。
「こっからじゃよく見えねェ」
「いいんだよ、見えなくて。おれのカラダ、傷だらけで汚ねェから」
——こいつはまだそんなことを。
どうやったら分かってくれるんだろう。言葉を尽くしたら、体に教え込んだら、伝わるだろうか。
「何言ってんだ。汚くなんかない。おまえのカラダはどこもかしこも綺麗でたまんねェ……だから、もっと見せてくれよ」
「いやだ……見たら絶対萎えちまう」
「じゃあ試してみるか?」
サンジの手を握り、自らの昂りへと触れさせる。
「でも……」
そこまでしてもまだ尻込みをするサンジにゾロは言った。
「おれの全部をおまえにやるから……おれにも、おまえの全部をよこせ」
何度も口を開きかけては、閉じ。そんなことを何度も繰り返してから、ようやくサンジの口から声が漏れた。
「…………分かった。おまえに、全部やる」
答えを聞くなり、握っていたサンジの手をクンと引く。バランスを崩して倒れ込んでくる体を支えつつ体の位置を入れ替えると、目の前に青白く光る裸身が晒された。決して眩しい光ではないけれど、胸の頂を彩る淡い色付きやそこ此処に散らばる小さな古傷達は、月光を浴びてはっきりと存在を主張していた。
「ほら、綺麗だ」
思わず伸ばした指に触れる肌は驚くほどに滑らかで。その感触を愉しみながら、ゾロは傷の一つ一つに触れていく。
「ここも、ここも、ここも」
触れる度に、サンジの息がわずかに乱れる。
「全部、おまえが必死に生きてきた証だろ。どれも大事なモンで、汚くなんかねェよ」
冴え冴えと輝く瞳が、ゆらりと揺れた。
「この傷ごと全部、おれはおまえが好きだ……サンジ」
コロン。やっぱり宝石みたいな綺麗な涙が、ゆらゆら揺れる水面から流れ出た。ゾロはその雫を舌で舐めとると、枕に散らばり光を放つ金糸をサラリと掬う。
「傷だけじゃねェ。このキンキラの髪も、水晶玉みたいな目も、白くてスベスベの肌も、この胸ン中にある心も。おまえを作るもんは、全部綺麗だ」
その証拠にほら、とゾロは再びサンジの手を自身の中心へと誘う。
そこは先ほどよりも熱く、硬く、存在を主張していた。
「嘘じゃねェだろ?」
「……ほんとだ」
へにゃんと眉尻を下げてサンジが笑った。
その顔に思わずゾロが見惚れている隙に、サンジは手早くベルトを抜きズボンの前をくつろげると、天を向くゾロの昂りを迷うことなく口に含んだ。
根本を輪っかにした指で軽く上下しながら裏筋を舌で辿り、張り出したカリを唇で挟んでから亀頭を舐め、鈴口に舌の先をほんの少しねじ込む。その刺激でまたさらに体積を増したそれを再び口いっぱいに頬張ると、上目遣いでゾロを見上げながらゆっくりと上下し始めた。
サンジがこちらを見上げながら口淫をしている。
その視覚の暴力と、ぬるりと陰茎を包む生暖かい粘膜の感触、時折舌を絡めたり喉の奥を窄ませたりしながら徐々に速度を増す上下運動に急速に射精感が高まる。思わず天を仰ぎ、盛大に眉間に皺を寄せて今にも出そうになるのを懸命に堪えていると、ゾロの耳が別の水音を拾った。
音の正体を探るべく薄目を開けて視線を戻したゾロの目が、とんでもないものを写した。
熱心にゾロのものを舐めしゃぶるサンジの片手が後ろに伸びている。
傍に落ちた、蓋の開いた小さなケース。下着がずり下げられて小さく形のいい尻の谷間が見えており、そこに出入りする細く白い指。
何をしているのか思い当たった瞬間、カッと頭に血が上った。
股間にしゃぶりつくサンジを引き剥がすと、その勢いのまま後ろに押し倒す。
「な、に」
驚いたサンジが目をパチクリとさせてゾロを見上げた
「おれにさせろ」
「え?」
「されてばっかじゃなくて、おれもおまえに触りてェ」
そう言って下着を引き抜くと、まだ挿れられたままのサンジの中指に自分の中指を沿わせ、つぷんと狭い窄まりに侵入した。
「アッ……!?」
サンジの喘ぎと共に、キュウと指が締め付けられる。入り込んだ中は、溶けそうなほど熱い。
「どうしたらおまえは気持ち良くなる?教えてくれよ」
ニィ、と笑うと、夜目でもわかるほどにサンジの体がさっと色付いた。
「あ……ここ、」
ゾロの指を、サンジの指がある場所へと導く。コリっとしたそこを軽く押すと、
「ふあっ!」
びくりとサンジの体が跳ねた。その拍子に突き出された胸の頂に思わずかぶりつくと、ガクリとサンジの首がのけぞる。
「んあぁっ、やめ……」
どうやらこちらも感じるらしい。
抗議の声を無視して口に含んだ小さな粒を舌でざらりと舐めて軽く歯を立てる。赤子のようにサンジの胸に吸い付きながら、反対側の頂に空いた手を伸ばし軽く捻って捏ね回す。
「や、ぞろっ……あ、あ、んっ——アアアッ!!」
ぷっくりと立ち上がったそこは感度も増すようで、サンジの口から高い声がこぼれ出る度に、ゾロの中指はキュウキュウと締め付けられた。
ふと下を向くと、ゾロのものよりは幾分かほっそりとして形のいい竿がしっかりと立ち上がり、先端から蜜を滴らせているのが見えた。
もっと気持ち良くさせたい。
その一心で今度はそちらに手を伸ばし、蜜を掬って親指で先端に塗りこめながら、残りの指で竿を握るとゆるゆると扱く。その刺激でさらに硬度を増したのを確認すると、ゾロはおい上げるように一気にスピードを上げた。
「あ、ふっ……ダメ、いっちま……う、ぁんっ」
「いいから。我慢すんな」
耳元に低音を吹き込み、ぬちぬちと音を立てながら強弱をつけて擦り上げると、一際高い声をあげてサンジがゾロの手の中に白濁を噴き上げた。
ガクリと体の力が抜けると同時に、ふっと緩んだ窄まりからサンジの指が抜け落ちる。ゾロもいったん指を抜くと、あん、とサンジが小さな声を上げた。
左手で受けた精液を右手の中指で掬うと、もう一度窄まりに指を挿し込み、入り口付近をほぐすようにしながらぐるりと触れていく。少し解れるとまた精液を掬い、一本、また一本とサンジの反応を見ながら徐々に指を増やしていき、長い時間をかけて丁寧にゾロはサンジのそこをほぐしていった。やがて、四本の指が根元まで入るようになった時。
「も……入れて、くれ」
お願いだ、ゾロ。と切羽詰まった声で乞われ、埋めていた四本の指を一気に引き抜く。枕元に置いてあったコンドームの袋を歯で噛み切ると片手で手早く装着し、落ちていたケースの中身を限界まで怒張した自身に塗りたくると、ゾロを求めてヒクつく穴にぴたりと押し当てた。
「……いいんだな?」
サンジがコクコクと頷いたのを合図に、ずぶりと先端をめり込ませる。
「ヒッ」
「痛ェか?」
「い、たく、ない……痛くない、から、もっと、お、く」
すぐに突き入れたいのを必死に堪えながら、傷つけないように、ゆっくりとサンジの中に自身を埋め込んでいく。
「全部、入ったぞ」
ようやく根元まで全部埋め込むと、熱くうねる中が甘えるように絡みついてきた。
——熱くて、柔らかくて、キモチイイ。
初めて感じる狂おしいほどの快感。すぐに動き出すのも勿体なくて、動かずじっとサンジの中を感じていたのに。
「すげ……ゾロが全部、入ってる」
そろりと下腹を撫でながら、綺麗に笑ってサンジが言うものだから。
今度こそ、理性なんてどこかに吹き飛んで、本能のままに夢中で腰を振った。
熱い、熱い、熱い。
内から燃えるような熱に煽られ、全身から汗が噴き出す。
中も、外も、カラダも、心も。どこもかしこも熱くてたまらない。
——カラン。
クーラーなんて意味がないくらいの熱で満ちた部屋の中。グラスに残っていた氷が、澄んだ音を立てて溶けて消えた。
麦茶の氷が溶ける頃
