「おやすみ」
くるりと巻いた眉頭にそっと唇が触れる。
自分が寝落ちた後の秘密の儀式に気付いたのはいつだろう。
それからは、寝たふりをしてこの瞬間を待つのがささやかな幸せだ。
そして朝。
まずは目を開けて一番に目に入る胸の太刀傷に、それから少し首を伸ばして開くことのない左目にキスをしてからそろりと腕の中から抜け出す。
一日の始まりの、おれだけの秘密の儀式。
扉が閉まると、ぱちりと目を開けたゾロが先程サンジの唇が触れた場所をそっと指で辿った。
ほんの僅か、口角が上がる。
それからくあ、と欠伸を一つすると再びまどろみの海へと潜っていった。
秘密
