メッセージへのお返事

新年明けましておめでとうございます。
去年は当サイトへ足を運んでくださり本当にありがとうございました。
なかなかサクサク更新!というわけにはいきませんが、今年も少しずつ新しいお話をこちらに置いていけたらと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて!
時代に逆行してサイトを作ってから初めて迎えるお正月に、懐かしいお話へとても嬉しいメッセージをいただきましたので、こちらでお返事させいただきます。
新年早々こんなご褒美をいただいて、私はなんて幸せ者なんでしょう。
きっといい一年になること間違いなしです(^^)

 

>ちか様
明けましておめでとうございます。
当サイトを見つけてくださって、そしてお話を読んでくださってありがとうございます。
私の書いたものがちか様の心に少しでも触れることができたようで、言葉にならないくらい嬉しいです。
「夜明け」はROM専から自分でも創作するようになってすぐに書いたもので、久々に読み返してみたら誤字はあるし文章も拙いしで恥ずかしい限りですが、だからこそこうやって感想をいただけてすごくすごく幸せな気持ちになりました。
こちらこそ本当にありがとうございます。
お礼になるかは分かりませんが、この二人のその後を少し覗き見た短いお話を書いてみたので楽しんで頂けると幸いです。
ちか様もどうぞゆっくりとお正月をお過ごしくださいませ。

 


 

「夢物語」
(「夜明け」の二人のその後)

 

「ハッピーニューイヤー」
 そっと触れ合わせたお猪口が、チン、と鈍い音を立てる。
 過去には仲間みんなで賑やかに飲み交わしながら迎えていた新年を、二人きりでしっとりと祝うようになってもう何年が経つのだろうか。
 そんなことを考えながら、サンジは横目で深く皺が刻まれるようになった男の潰えていない方の目尻をそっと見遣った。
 目尻だけじゃなく、秀でた額にも、美味い酒にゆるく上がった口角にも刻まれた皺。
 それは、自分も同じ。
 それだけの年月が経ったというのに、まだ若かったあの日、少しでも長く隣に立っていたいという願いを忍ばせて持ちかけた勝負にはいまだ決着がつかずにいる。
「あーあー、今年もまた決着がつかないまま新年を迎えちまった」
「だな」
 クク、とゾロが喉の奥で笑う。
 こんな風な笑い方をするのだということを、あの頃の自分は知らなかった。
「すぐに野垂れ死ぬかと思いきや、案外おまえもしぶといよなあ」
「いいじゃねェか。それにしぶといのはてめェも同じだろ」
「そりゃあ、おまえとの勝負に負けるわけにはいかないからな」
「おれは」
 海老のうま煮に豪快にかぶりつき、酒をぐいと呷ってから、ゾロは真っ直ぐにサンジを見た。
「てめェとの勝負に負けたくもないが、勝ちたくもねェ」
 ゾロがこんな甘いことを言うようになるなんてことも、あの頃の自分は知らなかった。
 いまだに勝負に決着がつかないからこそ知ることができた、ゾロの新たな一面。
 年を重ねるにつれて惜しげもなく新たな一面を見せるゾロと違い、自分はあの頃と同じでなかなか素直になれないままだ。
「なんだよそれ。それじゃあ勝負にならないだろ」
 今だってそうだ。
 人生という旅路の果てが見えるようになってきたからこそ余計に、ゾロの言わんとすることもその気持ちも痛いくらいにわかるのに、こうして憎まれ口ばかりたたいてしまう。
 そして、そんな自分のことなんかゾロはとっくにお見通しだということも、もうちゃんと知っている。
 これは、知っているからこその甘えだ。
「勝負は勝ち負けだけじゃねェ。引き分けってのもあるだろ、おれはそれがいい。こうやって毎年正月に、決着がつかないなんて言いながらてめェの作ったお節を食って酒飲んで、そんでいつか同時にぽっくり逝けたら」
 幸せじゃねェかと、目を細めて胸焼けしそうに甘ったるいことを言うゾロに、目の奥が熱くなった。
 その熱に突き動かされるままに、深く皺の刻まれた目尻にキスをする。
 そんなサンジの行動に、ゾロはさらに目を細めて言葉に負けないくらい甘く優しい笑みを浮かべた。
 自分だけが知っている、ゾロ。
 それがまた、さらに目の奥を熱くさせた。
「そうか、泣くほど嬉しいか」
「ばか、泣いてねェよ。……でも、叶うといいな。おまえのその夢物語」

 想像する。二人寄り添って、まるで眠るように命を終えてこの長く続いた勝負に「引き分け」という決着がつく瞬間を。
 それはひどく甘美な夢で、そんな奇跡が起こればいいという願いを込めて、サンジは今度は少しかさついたゾロの唇にそっとキスをした。