妄想SS

昨日、ボーッとしてる時に浮かんだゾサ妄想をちょっとだけ書こうと思ったら、書きながらさらに妄想が膨らんで結局ちょっとじゃ終わらず、昨日の自由時間全部溶かしてしまった。
しかも、例に漏れず書きたいとこだけ中途半端に書いただけ。
こうやって未完の作品ばかりを量産するのをなんとかしたいなぁと思いつつ、衝動には抗えず、さらに未完の作品が増えていくのであった……。

けど、こうやって閃いた勢いで書く時って、何かが憑依したみたいにすらすら筆が進む。
勢いとか情熱って大事よね。
大きな原動力になる。

ちなみにここに載せてないのも含め完成せずに放置してあるの数えてみたら、1234……7、7個もある!
いや、もしかしたらもう少しあるかも。
ホントひどい(苦笑)
根性が足りないな。

 


ボディガードゾロ×第三王子サンジ
身分差、この時点ではまだ未満の二人
書きたいとこだけ

 

 

「なあ、第三王子のサンジ殿下、ものすごい美形らしいぞ」
 なんでも男でもその気になっちまうくらいらしい、と下品な好奇心を隠さずにもう一人が続ける。
「眩しいくらいの金髪と白い肌で、そこらの女よりよっぽど色気があるって噂だぜ。どうせなら一度くらい拝んでみたいもんだ……なあ、ロロノア?」
 突然話を振られた男、ロロノア・ゾロは、表情を一つも変えぬまま答えた。
「興味ない」
 なんだよ、つまらない奴だなと不満も露わな声を聞き流し、ゾロは背を向けてその場を離れた。
(プロ意識のない奴らだ)
 こんな奴らと一緒に仕事をするなど先が思いやられる、と軽くため息をつく。
 ゾロ達は、第四王子であるヨンジのボディガードとして新たに雇われたのだった。何人もいるボディガードのうち、ヨンジの間近で警護をするのはほんのひと握りの人間であり、ゾロ達のような新参者は屋敷の周りの警護をするのが仕事だ。しかし、王宮内でそう危険なことなどあるはずもなく、たいていはこのように暇を持て余し、上司の目をすり抜けては噂話に興じていた。
 先ほど噂に上った第三王子のことは、ゾロも詳しくは知らない。体が弱いとかで部屋に篭りきりらしく、ここ数年は表舞台に一切現れず、王宮内でも姿を見かけた者はほとんどいないらしいと聞いた。それにも関わらずどこからともなく第三王子に関する噂は流れてきて、そのどれもが、彼の容姿にまつわるものだった。
 美人薄命とはいったものだが、第三王子もそうなのだろうか。王子は女ではないが、これだけ人の噂を集めるほどに美しいのであれば、この言葉が当てはまってもおかしくないだろう。
 そんなことをつらつらと考えながら第四王子の屋敷の周りを見回っていると、ふいに近くの植え込みがガサリと音を立てた。
「誰だ!」
 腰のサーベルを一瞬にして抜き構え、音がした辺りにじりじりとにじり寄る。
「チッ、ドジ踏んじまった」
 再びガサリと音を立てて、植え込みから男が現れた。すらりとした長身に、どこか儚げな雰囲気を纏った男だった。見事なまでの金髪と、まるで発光しているかのような白い肌に一瞬目が眩む。こんなに目立つ外見は一度見たら忘れないはずだが、生憎ゾロに見覚えはない。何より、こんなところに潜んでいる時点で怪しすぎる。
「侵入者か」
 視線と剣先は外さぬままに、ゾロは仲間に異常を知らせようと胸元に下げたホイッスルに手を伸ばした。
「それ以上動くな」
 あと少しで手が届く、というところで金髪の男が低く静かな声を発した。鋭い視線がゾロを矢のように射抜く。
 相手が怒鳴ったわけでも、武器で脅されたわけでもないのに、ゾロはなぜか、それ以上動くことができなかった。普段はこの程度のことで気圧されることなどなく、むしろ相手を威圧する側の人間だと自覚しているにも関わらず、だ。それほどまでに、相手の言葉は威厳に満ちており、その全身からは他を圧倒するような強さが滲み出ていた。
 ――敵わないかもしれない。
 一瞬、そんな思考が頭をよぎる。
 けれどもゾロはそんな弱気な思考をすぐに追い払うと、いかにして現状を打開するべきかと必死に頭を働かせた。
(こいつはいったい何者だ? 何が目的でここに忍び込んだ?)
 考えながらも、情報を求めて目の前の男に視線を走らせる。
 見たところ武器は所持しておらず、男は丸腰のようだった。身につけている衣服はシンプルなものだが、生地や細部を見るにおそらくかなりの高級品だと見受けられる。それに、よく手入れされた美しい金髪に、滑らかな白い肌。それはゾロがこれまでに見たことのあるどの金の髪や白い肌とも比べ物にならないほどに際立っていた。人の美醜には疎いゾロだが、おそらく顔立ちもかなり整っている部類に入るのであろうと思われた。まるで宝石のような青い瞳に、渦巻きのようにくるりと巻いた眉が乗っかっている――くるりと巻いた眉?
 この国で、このように巻いた眉を有するのはヴィンスモーク王家一族の人間だけだ。ひと目見てわかる王家のシンボルとして、この国の者なら誰でも知っている。それはもちろん、ゾロも例外ではない。
 ゾロの頭の中で、渦のように巻いた思考が一点に集中していく。王家の証である巻いた眉、眩しいほどに美しい金の髪に白い肌。先ほどの同僚達の言葉。それらが行くつく先は――。
「もしかして、第三王……もがっ」
「おっと、それ以上はダメだ」
 いつの間にか背後に立った男に口を塞がれて、言葉が手のひらに吸い込まれる。同時に、サーベルを握っていた手ごと握り込まれた。見た目の華奢さに似つかわしくない、かなり強い力だった。ゾロの力を以ってしても振り払えない。慌ててもがいた拍子に鼻から吸い込んだ息に、ほのかに煙草の香りが混じる。
「おまえの想像通り、おれはここの第三王子だ。ただ、ちょっと事情があってあまり騒がれたくないんだ。おまえが何もせず大人しくしていると約束するならこの手を離してやるが、どうする?」
 後ろから覗き込んできた顔をまっすぐに見てコクリと頷いて見せると、男――第三王子はゾロの口を覆っていた手を離した。
「無知ゆえの数々のご無礼、誠に申し訳ございません! 謝って許されるものではないことは承知しております。どうか、なんなりと処罰を」
 すぐさまサーベルを鞘に収めたゾロは、王子に向き直って跪くと深々と頭を下げた。
「いいよ、別に」
「いえ、ですが……」
「おれは堅苦しいのが嫌いなんだ。だから顔を上げろ、これは命令だ」
 命令とあれば従わないわけにもいかず、ゾロは跪いたまま仕方なしに顔を上げた。
「おまえ、所属と名前は?」
「私は、第四王子殿下の警護を務めさせていただいております、ロロノア・ゾロと申します。配属から日が浅くこのような無礼を働いたこと、改めてお詫び申し上げます」
「だからそういうのはやめろ」
 煩わしそうに手を振った後、王子はなぜか軽く吹き出した。
「何か?」
「いや、おまえヨンジにそっくりだなと思って。しかもそれでヨンジの警護か……ククッ」
 笑う王子の肩の揺れはさざなみのように全身に拡がり、やがてそれは腹を抱えるほどの盛大な笑いへと変わった。自分のことをこれほどに笑われて面白くない訳がない。しかし王子相手にあからさまに不機嫌な態度を取るわけにもいかず、せめて話題を変えようとゾロは気になっていたことを口にした。
「失礼ですが第三王子殿下、殿下は療養中の御身であるとお聞きしております。お供も連れずお一人でこのような場所にいらしていいのでしょうか」
「ああ、その噂」
 ようやく笑いやんだ王子は、今度は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「おれの体が弱いっていうのは真っ赤なウソ。おれがしょっちゅう城を脱走してはしばらく帰ってこないもんだから、国民を誤魔化すために周りが適当なウソをでっちあげただけだ」
「な、脱走……!? 警護の者は?」
「そんなの、撒くに決まってんだろ」
 ゾロはくらりと目眩がした。仮にも一国の王子が、警護もつけずに王宮から脱走などあってはならないことだ。しかも、王子の話ぶりからは周囲もそのことを知っていて黙認しているかのようだが、常識で考えてそんなことはあり得ない。
「恐れながら、そのようなことが許されるとは……」
「それが、許されちゃうんだなー。おれのこと、みんなもう匙投げてるから」
  おどけた声音がほんの一瞬暗く沈んだような気がして、ゾロは王子の顔を窺い見たが、そこには翳りのないニコニコとした笑みが張り付いているばかりだった。
「てなわけで、おれ今から脱走するところだったんだよね。だから……見逃せ」
 スッと真顔になった王子が、静かな声で命じた。
 その迫力に再び気圧されたゾロの体は、まるで金縛りにでもあったかのように動かなかった。
 しかし、ゾロにもプライドというものがある。いくら相手が王子とはいえ、そう何度も迫力負けするというのは我慢ならない。それに、この命令は王族の警護を担う者として従うわけにはいかなかった。
「できません」
 動かない体の、目と口だけを必死に動かして拒否の言葉を紡ぐ。
「あのさぁ……だいたいおまえ、動けないんだろ? なのにどうやっておれのこと止めるつもりなの」
「無理矢理に動いてでも止めます」
 言うや否や臍下に気力を込めると、僅かばかり体の縛めが緩んだ。さらに力を込めると、上半身がさらに動くようになる。
「ふうん」
 冷たかった男の目に、面白がるような色が混じる。
「おまえ、やるな――そうだ! それならおまえがおれの警護すればいいじゃないか」
「は? 今なんと……」
「だから、おれ一人で脱走するのがダメだって言うなら、警護がいればいいんだろ。だから、今からおまえがおれの警護をすれば何の問題もない」
「いや、そういうことでは……というか、私は今第四王子殿下の警護中ですので」
「ごちゃごちゃうるさいな。いいから来いって。ヨンジのとこには後からおれが話をつけておくから」
 王子はゾロの腕を掴むと、強引に手を引いて歩き出した。少し前を行く第三王子の背中をながら、ゾロはため息をつく。「わかりましたから、手を離してください」
 立ち止まり、振り返ってゾロの顔を見た王子は、ゾロに逃げる気はないと判断したのかおとなしく手を離した。
「で、どちらに向かわれるのですか」
「こっちだ」
 王子が向かったのは、ゾロがその存在を知らない抜け道だった。迷いなく進む様から、何度も脱走したというのが真実だと知れる。
(とんでもない王子がいたもんだ)
 ゾロはもう一度ため息をつき、それからサッと表情を切り替えると、前を行く王子の背中を追いかけた。

 


 

この後の流れのざっくり妄想

・実はサンジは幼少期本当に体が弱く、そのせいで家族から虐げられていた。
・自分はいなくなればいいんだ、とあるとき王宮から脱走。行くあてもなく路頭に迷っているところをゼフに保護される。
・その後王宮に戻るが、時折脱走してはゼフの元に行き、蹴りや料理を学ぶ。
・初めてゾロを警護に任命して脱走してからは、毎回ゾロを連れて脱走。自分の作ったご飯を食べさせたりする。それからなんやかんや(←)あってゾサになる。
・自分の夢(料理人になる)を叶えるために、王族の位を捨てて王宮から出たいと願うサンジだが、あと一歩が踏み出せない。
・そんなサンジをゾロが半ば無理矢理連れ出し、小さな店でも開いて二人で幸せに暮らす。

~HAPPY END~