カテゴリー: SS

HBD!!

3月2日、今日はサンジ君のお誕生日ですね!
サンジ君、お誕生日おめでとう。
こんな時間だし、今頃はゾロと二人で過ごしてるのかな。

最近は本誌で眉毛の向きが変わったり、生身の人間なのにビーム跳ね返しちゃったりして外骨格……と今後どうなっていくのか心配はありますが、どうやら心の有り様はサンジ君のままであるようなので、そこは本当によかったと安心して……いいのかな?
本当に強い人だと思います。
力もだけど、心が。
あんな幼少期過ごして、死にかけるような遭難して、でもあれだけ優しく真っ直ぐあれるのは本当にすごいと思う。
あー、やっぱ好きだなぁ。

大好きなサンジ君の誕生日を祝って、短いですがお話を書きました。

Happy Birthday Dear……

こんな幸せな誕生日を過ごしているといいなという妄想です。
19の二人にはこれは無理だと思うので、少なくとも21以上の二人かなと思っています。
最近は他ジャンルばかり書いていたけど、久々にゾサ書いたらとても楽しかった。
そろそろアンソロにも取りかからないとだし、ゾサでも書きたいお話は色々あるから少しずつ書いていけるといいな。

ワンピースオンアイスとSS

今年初めて開催されたワンピースのアイスショーである、「ワンピースオンアイス」。
会場に観に行くことは叶いませんでしたが、有料で動画配信をしてくれるとのことでマルチアングルの視聴チケットを買い、ここのところ通勤中は常にワンピースオンアイスの動画を見ています。
毎度アングルを変え、もう3回は見たかな。

多くの人が感想を記してくださっているのでもう多くは語りませんが、これだけは言わせてください。

 

……もうね、最高でした!!!!

 

アラバスタ編という見応えたっぷりのお話がテーマになっているというのもありますし、何より、キャストさん達が本当に素晴らしくて。
表現力の塊であるスケーターさんがワンピースのキャラを演じると、こんなにも心に響くものが出来上がるのかと深く感動しました。
どのキャストさんもそれぞれに素晴らしかったのですが、その中でもこの3人の印象が強かったので少しだけ。

ルフィ
宇野昌磨くん、ルフィにしか見えない。憑依型の方なのでしょうか、表情も、伸び伸びとした体の動きも、自由奔放ながらもここぞという時には死ぬほどカッコいいところも、もはや完全にルフィでした。氷の上で走ったり転げたり飛び跳ねたり、あんな自由にうごけるものなんですね。試合で見る彼とは全然違う。技術と表現力の高さに終始唸りっぱなしでした。

サンジ君
恥ずかしながら、島田高志郎さんというスケーターを今回のショーで初めて知ったのですが、ルフィとはまた別次元で完璧なるサンジ君でした。登場した瞬間、漫画の中から抜け出してきたのかと思った。それくらいサンジ君だった。
すらりとした長身、少し猫背君の立ち姿、薄い肩、長い手足、小さく丸い頭。滑るとき、常に片手もしくは両手をポケットに入れているところとか、風になびく金糸、悪魔風脚のごとき高速スピン。フィナーレではメロリンまで!
高志郎サンジ、最高でした。演じてくれてありがとう。今やすっかりファンです。

クロコダイル
大人の男の色気が半端なかった……!
いかにも手触り良さそうなコート?マント?をはためかせながら、力強く荒々しい滑りを見せてくれるのがもうね、たまらなくてですね。葉巻とか、衣装とか、細かいところまで凝ってくださってるのも素晴らしい。
フィナーレではカルーとかにいたずらしかけてるのがお茶目で可愛くて……ギャップ!!!
私がギャップに弱い女って知ってのことですか?反則ですよ??
原作でもクロコダイルは憎めなくてわりと好きなんだけど、今回のアイスショーでより一層好きになりました。
サンジ君もそうだけど、クロコダイルも砂になってサラサラ~と流動的な動きをするキャラなので、アイススケートの相性がすごくいいですね。ルフィも滑ることで腕が伸びているような気がしたり。新たな発見でした。

他にもゾロの三刀流見せてくれるなんて!とか、ボンちゃん最高!とか色々ありますが、長くなりそうなのでこの辺でやめておきます。
来年もまた開催されることがあれば、今度こそ会場に行って生で見てみたいな。

 

それと、今回アイスショーを見た感動と興奮が突き抜けた結果、よくわからんお話を書いてしまったのでここにひっそり載せておきます。
アイスショーを見た私の気持ちは、これを読んでもらった方がよくわかるかもしれない。
もしうっかり続くことがあれば、作品ページにも載せようかなー。

 


「氷上の君へ、愛を込めて」
 現パロ、大学生ゾロ×スケーターサンジ
(Twitter(X)に載せたものを加筆修正しています)

 

 ——氷上のプリンス。

 人は皆、彼をそう呼ぶらしい。
 もう何度目かわからない動画を食い入るように見ながら、最初にその呼び名を思いついた奴は天才だと思った。スラリとした長身に長い手足、キラキラ輝く金の髪、アイスブルーの瞳に甘いマスク。見た目だけでも十分プリンスと呼ぶに相応しいが、氷上でのうっとりするほどに優雅な滑り、気高く美しい立ち姿は、思わずその場にひれ伏してしまいそうになるほどの高貴なオーラを放っている。
「あー、何度見てもたまんねェ」
 画面の中で高速スピンをキメるプリンス——名をサンジと言う——を見つめて、おれはうっとりとため息を漏らした。

 これまで、フィギュアスケートにはあまり興味がなかった。オリンピックの時などにテレビで放送していればなんとなく眺める、その程度。有名なメダリストなら顔と名前くらいはわかるが、それ以外の選手に関する知識は皆無だった。そんなだから、今や最推しであるサンジのことも何一つ知らなかった。
 おれがサンジを知ったのは、アイスショーがきっかけだ。
 子供の頃から大好きでずっと読んでいる漫画(今も連載中だ)のアイスショーが初めて開催されると知ったおれは、地元開催だったこともあって行ってみようかと考えた。アイスショーなるものに行くのももちろん初めてで、まずチケットの値段の高さに驚愕した。なんと三万円! おれの一日のバイト代よりもうんと高い。もちろんこれは一番いい席の値段だが、一番安い席でも一万円もする。あまりの高額っぷりに「やっぱり行くのやめようか……」と思いかけたが、原作ファンとして見ておきたい気持ちが勝ち、一番安いスタンド席を取ることにした。まだ学生であるおれの懐には大ダメージだったが、その分バイトを入れれば問題ない。
 せっかく行くからにはと公式から次々と発表される情報を見ていると、主人公を演じるのが超有名なメダリストであることはわかった。けれど、他のキャラの配役は正直知らない顔と名前ばかり。ふーん、と眺めるだけで記憶には残らなかった。それよりも、ショーでやるのが原作の中でも三本指に入るくらいに好きな話だったので、どんな風に仕上がるのか、そっちの方が楽しみで仕方なかった。
 あの時、なんでサンジのことが目に入らなかったのか、今となっては本気で謎だ。あんなに目を引く存在に気づかないはずはないのに。過去に戻れるのならば「バカ野郎!」と自分をぶん殴ってやりたい。けれどそんなことは不可能だし、今はすっかりサンジのファンとなっているのだから結果オーライだ。

 そして迎えたショー当日。
 漫画の世界からポンと飛び出して来たかのような、あまりにハマり役のサンジの滑りに、おれは一目で魅了されてしまった。
 ショー自体ももちろん素晴らしくて、あんなに高いと思っていた一万円すら「こんな安い値段で見させてもらっていいものか」と思ったくらいだったが、中でもサンジの素晴らしさは群を抜いていた。
 ショーの最中も気づけばサンジのことを目で追っていて、フィナーレを迎える頃にはすっかりファンになってしまっていた。

 ファンになってからのおれの行動力には目を見張るものがあった。
 まず、フィギュアスケートについての知識を徹底的に詰め込んだ。今のおれならフィギュアスケートの実況中継を見ても、解説者の言ってることが完璧に理解できる。なんなら、おれの方が上手く解説できるかもしれない。
 それから、Youtubeで見ることのできるサンジのこれまでの試合の映像を全て見た。見れば見るほどにおれはサンジの魅力の虜になり、もはやサンジはおれの生きる糧と同義だった。サンジを知らずにいたここ数年が本当に悔やまれる。なぜおれはあんなムダな時間を過ごしてきてしまったのだろうか……。
 もちろん、ファンクラブにも即入会した。正確に言えば、アイススケート全体のファンクラブだ。サンジ個人の公式ファンクラブがないので致し方ない。けれど、会員限定席の販売があったり、ファンミーティングに参加できるというメリットがあるので、常に寂しいお財布からお金を出してでも入会するだけの価値は十二分にあった。
 あとは、これまでに面倒くさいからと一切やったことのなかったSNSのアカウントを片っ端から作った。インスタ、Twitter、TikTok。サンジのアカウントがあれば即座にフォローしたし、サンジがやっていないSNSは情報収集と誰かが好意であげてくれる動画目当てに日々チェックを怠らなかった。SNSかから得られる情報やお宝映像だけでもわざわざアカウントを作った価値があるというものだが、何よりも、サンジの投稿にコメントができるというのは、何ものにも代え難い魅力だった。好きです、応援してます、と間接的にでも伝えられるまたとないチャンスだ。自分の存在を認知してほしいというよりは少しでもサンジの力になればという一心で、サンジのファンになったその日から、おれはサンジがSNSに投稿するたびに必ずコメントをするようになった。
 もちろん、個別に返信が来ることなどない。そもそも、大好きな漫画のアイスショーで演じたキャラ同様に女に甘く男には塩対応のサンジは、女どもからのコメントには「レディ達〜! いつも愛あるコメント本当にありがとう。全部大切に読ませてもらってるよ! おれからの愛も届け、メロリ〜ン♡」なんて返信をするくせに、男からのコメントについては無視がデフォルトだ。けれど時々、本当に稀に、「野郎どもからのコメントなんて嬉しかねーよ! でも……サンキュ」なんて書き込みがあるものだからタチが悪い。そんなコメントがあった日にはおれは一日悶絶して過ごし(比喩ではなく、実際ベッドでのたうち回って過ごした)、サンジという沼により一層深くはまり込んでいくのだった。
 おれの応援の効果、というわけではなくサンジ自身の努力の結果、サンジはメキメキと頭角を現し、気づけば国を代表するスケータへと成長を遂げていた。ファンの数は桁違いに増え、SNSのフォロワー数もうなぎ上り。サンジの投稿に対するコメントの数もとんでもない数になり、おれのコメントなどあっという間に埋もれてしまうようになっていた。それでもおれは、これまで通りサンジの投稿には欠かさずコメントをし、行ける範囲で試合やアイスショーを見に行き、なんならファンレターも送り、サンジのことを応援し続けた。
 たとえ遠い存在になってしまっても、おれにとってサンジが魅力的かつ最推しであることに変わりはない。むしろ、多くの人の注目を浴びてより一層輝きを増すサンジのことを、おれはまるで自分のことのように誇らしく思うのだった。

 そんなある日、おれに天からのプレゼントがやってきた。
 なんと、スケーター出演のファンミーティングに参加できることになったのだ。しかも運のいいことに、そのファンミーティングにサンジが出演するらしい! 神には祈らないのが信条のおれだが、この時ばかりは祈ってやってもいいと真剣に思った。
 バイトを詰め込んで得た軍資金で、友達のウソップに相談に乗ってもらってその日のための一張羅を揃え、洒落た美容室で髪も切ってもらった。家を出る前に風呂に入って念入りに体を洗い、歯磨きの後にマウスウォッシュもした。ファンレターも書いたし、悩みに悩んだ末にプレゼントとして花束も準備した。デルフィニウムとブルースターの間にカスミソウを散りばめた、淡いブルーの花束。サンジの目の色に似せて選んだのがおれなりのこだわりポイントだ。
 そうして出来うる限りの最大のお洒落と準備をしたおれは、緊張と期待で胸が張り裂けそうになりながらも、ファンミーティングのある会場へと向かったのだった。

めぐるいのち

先日読んだ本に影響を受け、食べるために生き物を殺して解体する(=屠る)サンジ君について考えていたらちょっとしたSSになりました。

 

書き途中のものがあるのにこうやってすぐ脱線しちゃう……

 

サンジ君が仲間の知らないところで一人生き物を殺して解体しているところを、ゾロ一人だけはなんかの拍子に見ることがあればいいなと思って。
慣れた手つきで解体していく様を見ながら、サンジ君は普段生かすための刃(包丁)を振るうけれど、自分と同じように殺すための刃を振るうこともあるんだなと最初は思ったゾロが、違う、同じじゃないと気付く世界線があったらいいなという願望です。

 

たとえ殺すとしても、サンジ君のそれは最終的には料理へと姿を変え、仲間を生かす糧にするというのが目的。
つまりは殺しているけれど、その命をちゃんとめぐらせている。
一方、ゾロが刀で人を殺すのは文字通り殺すだけ。
殺した先で命はめぐらない。
その違いがたまらないです。

 

そして、自分一人で、自分の力だけで生きていけると思っていたゾロが、(船に乗ってからは)料理人であるサンジ君の手によって生かされているということに気付くともっとたまらないな~と思って書いたのですが、そこのところが上手く書き切れなかった……なんとなく読み取って頂けるといいのだけど。

 

この話を書くにあたってYoutubeでイノシシを裁く動画を見たのだけど、なかなかに興味深かったです。
ジビエは普段食べないけれど、鶏や豚、牛なんかもこうやって解体されているし、それを仕事にしている人達がいる。
だから何不自由なくスーパーで肉が買えるのだと、このお話のゾロじゃないけどそんな当たり前のことに改めて気がついてハッとしました。
生きるということは、生かされるということだ。

真ん中BD

今日は七月七日。七夕ですね。
そして、ゾロとサンジ君の真ん中BDでもあります。
七夕が真ん中BDってすごいよね、運命を感じる。

こないだネックレスが絡まってしまった時に、ゾロって意外と器用に解いてくれそうだなと思って。
そんな妄想に真ん中BDを絡めてSSにしてみました。
現パロで、結婚して1-2年くらいのゾサ。
短いので、ちょっとした暇つぶしにでもどうぞ。
基本的に頭の中で流れる映像を文章にするスタイルですが、今回は目を細めるサンジ君のシーンが個人的にベストワンでした。
絵が上手かったらそのシーン自分で描けたのに……絶望的なまでに絵が下手なのが悔やまれる。

 

妄想SS

昨日、ボーッとしてる時に浮かんだゾサ妄想をちょっとだけ書こうと思ったら、書きながらさらに妄想が膨らんで結局ちょっとじゃ終わらず、昨日の自由時間全部溶かしてしまった。
しかも、例に漏れず書きたいとこだけ中途半端に書いただけ。
こうやって未完の作品ばかりを量産するのをなんとかしたいなぁと思いつつ、衝動には抗えず、さらに未完の作品が増えていくのであった……。

けど、こうやって閃いた勢いで書く時って、何かが憑依したみたいにすらすら筆が進む。
勢いとか情熱って大事よね。
大きな原動力になる。

ちなみにここに載せてないのも含め完成せずに放置してあるの数えてみたら、1234……7、7個もある!
いや、もしかしたらもう少しあるかも。
ホントひどい(苦笑)
根性が足りないな。

 


ボディガードゾロ×第三王子サンジ
身分差、この時点ではまだ未満の二人
書きたいとこだけ

 

 

「なあ、第三王子のサンジ殿下、ものすごい美形らしいぞ」
 なんでも男でもその気になっちまうくらいらしい、と下品な好奇心を隠さずにもう一人が続ける。
「眩しいくらいの金髪と白い肌で、そこらの女よりよっぽど色気があるって噂だぜ。どうせなら一度くらい拝んでみたいもんだ……なあ、ロロノア?」
 突然話を振られた男、ロロノア・ゾロは、表情を一つも変えぬまま答えた。
「興味ない」
 なんだよ、つまらない奴だなと不満も露わな声を聞き流し、ゾロは背を向けてその場を離れた。
(プロ意識のない奴らだ)
 こんな奴らと一緒に仕事をするなど先が思いやられる、と軽くため息をつく。
 ゾロ達は、第四王子であるヨンジのボディガードとして新たに雇われたのだった。何人もいるボディガードのうち、ヨンジの間近で警護をするのはほんのひと握りの人間であり、ゾロ達のような新参者は屋敷の周りの警護をするのが仕事だ。しかし、王宮内でそう危険なことなどあるはずもなく、たいていはこのように暇を持て余し、上司の目をすり抜けては噂話に興じていた。
 先ほど噂に上った第三王子のことは、ゾロも詳しくは知らない。体が弱いとかで部屋に篭りきりらしく、ここ数年は表舞台に一切現れず、王宮内でも姿を見かけた者はほとんどいないらしいと聞いた。それにも関わらずどこからともなく第三王子に関する噂は流れてきて、そのどれもが、彼の容姿にまつわるものだった。
 美人薄命とはいったものだが、第三王子もそうなのだろうか。王子は女ではないが、これだけ人の噂を集めるほどに美しいのであれば、この言葉が当てはまってもおかしくないだろう。
 そんなことをつらつらと考えながら第四王子の屋敷の周りを見回っていると、ふいに近くの植え込みがガサリと音を立てた。
「誰だ!」
 腰のサーベルを一瞬にして抜き構え、音がした辺りにじりじりとにじり寄る。
「チッ、ドジ踏んじまった」
 再びガサリと音を立てて、植え込みから男が現れた。すらりとした長身に、どこか儚げな雰囲気を纏った男だった。見事なまでの金髪と、まるで発光しているかのような白い肌に一瞬目が眩む。こんなに目立つ外見は一度見たら忘れないはずだが、生憎ゾロに見覚えはない。何より、こんなところに潜んでいる時点で怪しすぎる。
「侵入者か」
 視線と剣先は外さぬままに、ゾロは仲間に異常を知らせようと胸元に下げたホイッスルに手を伸ばした。
「それ以上動くな」
 あと少しで手が届く、というところで金髪の男が低く静かな声を発した。鋭い視線がゾロを矢のように射抜く。
 相手が怒鳴ったわけでも、武器で脅されたわけでもないのに、ゾロはなぜか、それ以上動くことができなかった。普段はこの程度のことで気圧されることなどなく、むしろ相手を威圧する側の人間だと自覚しているにも関わらず、だ。それほどまでに、相手の言葉は威厳に満ちており、その全身からは他を圧倒するような強さが滲み出ていた。
 ――敵わないかもしれない。
 一瞬、そんな思考が頭をよぎる。
 けれどもゾロはそんな弱気な思考をすぐに追い払うと、いかにして現状を打開するべきかと必死に頭を働かせた。
(こいつはいったい何者だ? 何が目的でここに忍び込んだ?)
 考えながらも、情報を求めて目の前の男に視線を走らせる。
 見たところ武器は所持しておらず、男は丸腰のようだった。身につけている衣服はシンプルなものだが、生地や細部を見るにおそらくかなりの高級品だと見受けられる。それに、よく手入れされた美しい金髪に、滑らかな白い肌。それはゾロがこれまでに見たことのあるどの金の髪や白い肌とも比べ物にならないほどに際立っていた。人の美醜には疎いゾロだが、おそらく顔立ちもかなり整っている部類に入るのであろうと思われた。まるで宝石のような青い瞳に、渦巻きのようにくるりと巻いた眉が乗っかっている――くるりと巻いた眉?
 この国で、このように巻いた眉を有するのはヴィンスモーク王家一族の人間だけだ。ひと目見てわかる王家のシンボルとして、この国の者なら誰でも知っている。それはもちろん、ゾロも例外ではない。
 ゾロの頭の中で、渦のように巻いた思考が一点に集中していく。王家の証である巻いた眉、眩しいほどに美しい金の髪に白い肌。先ほどの同僚達の言葉。それらが行くつく先は――。
「もしかして、第三王……もがっ」
「おっと、それ以上はダメだ」
 いつの間にか背後に立った男に口を塞がれて、言葉が手のひらに吸い込まれる。同時に、サーベルを握っていた手ごと握り込まれた。見た目の華奢さに似つかわしくない、かなり強い力だった。ゾロの力を以ってしても振り払えない。慌ててもがいた拍子に鼻から吸い込んだ息に、ほのかに煙草の香りが混じる。
「おまえの想像通り、おれはここの第三王子だ。ただ、ちょっと事情があってあまり騒がれたくないんだ。おまえが何もせず大人しくしていると約束するならこの手を離してやるが、どうする?」
 後ろから覗き込んできた顔をまっすぐに見てコクリと頷いて見せると、男――第三王子はゾロの口を覆っていた手を離した。
「無知ゆえの数々のご無礼、誠に申し訳ございません! 謝って許されるものではないことは承知しております。どうか、なんなりと処罰を」
 すぐさまサーベルを鞘に収めたゾロは、王子に向き直って跪くと深々と頭を下げた。
「いいよ、別に」
「いえ、ですが……」
「おれは堅苦しいのが嫌いなんだ。だから顔を上げろ、これは命令だ」
 命令とあれば従わないわけにもいかず、ゾロは跪いたまま仕方なしに顔を上げた。
「おまえ、所属と名前は?」
「私は、第四王子殿下の警護を務めさせていただいております、ロロノア・ゾロと申します。配属から日が浅くこのような無礼を働いたこと、改めてお詫び申し上げます」
「だからそういうのはやめろ」
 煩わしそうに手を振った後、王子はなぜか軽く吹き出した。
「何か?」
「いや、おまえヨンジにそっくりだなと思って。しかもそれでヨンジの警護か……ククッ」
 笑う王子の肩の揺れはさざなみのように全身に拡がり、やがてそれは腹を抱えるほどの盛大な笑いへと変わった。自分のことをこれほどに笑われて面白くない訳がない。しかし王子相手にあからさまに不機嫌な態度を取るわけにもいかず、せめて話題を変えようとゾロは気になっていたことを口にした。
「失礼ですが第三王子殿下、殿下は療養中の御身であるとお聞きしております。お供も連れずお一人でこのような場所にいらしていいのでしょうか」
「ああ、その噂」
 ようやく笑いやんだ王子は、今度は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「おれの体が弱いっていうのは真っ赤なウソ。おれがしょっちゅう城を脱走してはしばらく帰ってこないもんだから、国民を誤魔化すために周りが適当なウソをでっちあげただけだ」
「な、脱走……!? 警護の者は?」
「そんなの、撒くに決まってんだろ」
 ゾロはくらりと目眩がした。仮にも一国の王子が、警護もつけずに王宮から脱走などあってはならないことだ。しかも、王子の話ぶりからは周囲もそのことを知っていて黙認しているかのようだが、常識で考えてそんなことはあり得ない。
「恐れながら、そのようなことが許されるとは……」
「それが、許されちゃうんだなー。おれのこと、みんなもう匙投げてるから」
  おどけた声音がほんの一瞬暗く沈んだような気がして、ゾロは王子の顔を窺い見たが、そこには翳りのないニコニコとした笑みが張り付いているばかりだった。
「てなわけで、おれ今から脱走するところだったんだよね。だから……見逃せ」
 スッと真顔になった王子が、静かな声で命じた。
 その迫力に再び気圧されたゾロの体は、まるで金縛りにでもあったかのように動かなかった。
 しかし、ゾロにもプライドというものがある。いくら相手が王子とはいえ、そう何度も迫力負けするというのは我慢ならない。それに、この命令は王族の警護を担う者として従うわけにはいかなかった。
「できません」
 動かない体の、目と口だけを必死に動かして拒否の言葉を紡ぐ。
「あのさぁ……だいたいおまえ、動けないんだろ? なのにどうやっておれのこと止めるつもりなの」
「無理矢理に動いてでも止めます」
 言うや否や臍下に気力を込めると、僅かばかり体の縛めが緩んだ。さらに力を込めると、上半身がさらに動くようになる。
「ふうん」
 冷たかった男の目に、面白がるような色が混じる。
「おまえ、やるな――そうだ! それならおまえがおれの警護すればいいじゃないか」
「は? 今なんと……」
「だから、おれ一人で脱走するのがダメだって言うなら、警護がいればいいんだろ。だから、今からおまえがおれの警護をすれば何の問題もない」
「いや、そういうことでは……というか、私は今第四王子殿下の警護中ですので」
「ごちゃごちゃうるさいな。いいから来いって。ヨンジのとこには後からおれが話をつけておくから」
 王子はゾロの腕を掴むと、強引に手を引いて歩き出した。少し前を行く第三王子の背中をながら、ゾロはため息をつく。「わかりましたから、手を離してください」
 立ち止まり、振り返ってゾロの顔を見た王子は、ゾロに逃げる気はないと判断したのかおとなしく手を離した。
「で、どちらに向かわれるのですか」
「こっちだ」
 王子が向かったのは、ゾロがその存在を知らない抜け道だった。迷いなく進む様から、何度も脱走したというのが真実だと知れる。
(とんでもない王子がいたもんだ)
 ゾロはもう一度ため息をつき、それからサッと表情を切り替えると、前を行く王子の背中を追いかけた。

 


 

この後の流れのざっくり妄想

・実はサンジは幼少期本当に体が弱く、そのせいで家族から虐げられていた。
・自分はいなくなればいいんだ、とあるとき王宮から脱走。行くあてもなく路頭に迷っているところをゼフに保護される。
・その後王宮に戻るが、時折脱走してはゼフの元に行き、蹴りや料理を学ぶ。
・初めてゾロを警護に任命して脱走してからは、毎回ゾロを連れて脱走。自分の作ったご飯を食べさせたりする。それからなんやかんや(←)あってゾサになる。
・自分の夢(料理人になる)を叶えるために、王族の位を捨てて王宮から出たいと願うサンジだが、あと一歩が踏み出せない。
・そんなサンジをゾロが半ば無理矢理連れ出し、小さな店でも開いて二人で幸せに暮らす。

~HAPPY END~

 

“HAPPY” BIRTHDAY!

3月2日、今日はサンジ君のお誕生日。
なんとおめでたい日なんでしょう!
きっと、サニー号で盛大な宴が開かれるんだろうな。
そしてみんなからたくさんおめでとうってお祝いしてもらうんだろうな。

 

HAPPY BIRTHDAYって、「HAPPY」という文字の通り、生まれてきたことが嬉しくて楽しくて幸せ!とその人が生まれた日を祝う言葉だけれど、ジェルマでつらい幼少期を過ごしていた頃のサンジ君の誕生日はきっと全然「HAPPY」なものじゃなかったと思う。
むしろ、生まれてきてごめんなさいって胸を引き裂かれるような気持ちを強く感じる日だったんじゃないかな。
そんなサンジ君が、ジェルマを出てゼフに出会って、それからルフィに出会って。
そうして誕生日に「おめでとう」って心からの言葉をもらううちに、生まれてよかった、生きててよかった、今すごく幸せだって思えてるといいな。
そんな気持ちを込めた誕生日のSSを書きました。

 

“HAPPY” BIRTHDAY

 

本当は誕生日に向けて書いてたゾサの話があったんだけど、笑っちゃうくらい全然間に合わなかったのでひとまずはこちらのSSでお祝いです。
ゾサのやつも、絶賛行き詰まり中ではあるけれどできれば3月中には完成できたらいいな……とは思っているので、書き上がればまたアップします。

バレンタインSS

今日はバレンタインですね。
すっかり胸キュンエピソードとは無縁の年になってしまったので、今年も私のバレンタインは職場でお世話になってる方への義理(?)チョコと、旦那さんと子ども達にあげておしまいです。
ちなみに自分用にはカヌレ詰め合わせ買いました。
美味しいですよね、カヌレ。

そして、いつもこのサイトへ遊びに来てくださる方々へ、チョコの代わりにSSを用意しました。
短いですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

 


 

『お口直しはあなたのタバコで』

テンパリングしたチョコレートに作っておいたガナッシュをくぐらせては、バットに並べていく。
丸くツヤツヤと輝くチョコレート達。
そこからさらにココアパウダーや粉糖をまぶしたり、ホワイトチョコレートで模様をつけたり、細かく砕いたナッツを乗っけたりして仕上げていく。
全てにデコレーションを施し終え、まるで宝石箱の中身のように輝かしいチョコレートを眺めると、サンジは「よし」と満足そうに息をついた。

今日は2月14日。巷ではバレンタインデーと呼ばれ、レディ達が想いを寄せる男にチョコレートを渡して気持ちを伝える日だそうだが、ここサニー号ではコックであるサンジが愛情をたっぷり込めた手作りチョコレート菓子を振る舞う日となっている。
大食漢の男どもにはブラウニーやフォンダンショコラなど、食べ応えのあるものを。
甘いものが苦手なゾロには上等なウイスキーを使ったウイスキーボンボンを。
そして最後に、サンジが愛してやまないナミとロビンにトリュフチョコレートを作り終えたのだった。
レディ達にはきれいに箱に詰めてプレゼントしよう、箱にかけるリボンは何色にしようかと考えながら、取り出したタバコに火をつけて煙を深く吸い込んだところで、耳慣れた足音が聞こえた。

「甘ったりぃ」

ドアを開けるなり、部屋に充満するチョコレートの香りにゾロが顔を顰める。
「チョコレート作ってたからな。そりゃ甘いだろうよ」
外まで匂いは漏れていただろうし、だったら来なきゃいいのにと思うが、おおかた鍛錬後の飲み物をもらいに来たのだろう。
そう当たりをつけ、言われるよりも先にゾロ専用ドリンクを取りに冷蔵庫へと向かう。
「飲みモンくれ」
「わーってるよ。少し待っとけ」
グラスにたっぷりとドリンクを注いで振り返ると、先ほど作ったばかりのトリュフをゾロが一粒つまんで口に入れるところだった。
「あ、てめェ! それはナミさんとロビンちゃんにお渡しする大事なチョコなんだぞ!」
「やっぱり甘ェ」
悪びれもせずそんなことを言うと、冷蔵庫の前に立つサンジの方へとやってくる。

「クソマリモめ、勝手に食った挙げ句に文句言うんじゃねェよ! だいたいてめェのはこっち――」
ぎゃんぎゃん喚くサンジの口からタバコを抜き取ると、ゾロが唇を寄せてきた。
わずかに開いた歯の隙間からゾロの舌がぬるりと入り込む。
サンジの口内に余すことなく舌を這わせ、味わい尽くしたところでようやく舌を抜くと、呆然と立ち尽くすサンジの口にタバコを差し戻した。
それから、サンジの手に握られたままのドリンクを奪い取ると一気に飲み干して空のグラスをシンクに置き、いまだ呆然と立ち尽くすサンジの横を通り過ぎ、キッチンのドアへと手をかける。
「な、な……真っ昼間から何してくれてんだ! 誰か来たらどうすんだよ!!」
ようやく我に返ったサンジがその背中に向かって怒鳴ると、振り返ったゾロがニヤリと笑った。
「口直し。チョコは甘ェけど美味かった」
タバコの苦みがちょうどいい、と言い置いてゾロの姿がドアの向こうに消える。
「なんだよ、それ。反則だろ……」
後には真っ赤になって座り込んだサンジだけが残された。


 

(ちなみに、なんで甘いもの苦手なゾロがわざわざチョコをつまみ食いしたかって、明らかにナミとロビンのために特別に作られたそれがなんか面白くなかったようです。自分だって特別に作ってもらってるのにね。あとは、サンジ君の作ったものはたとえ甘いと分かっていてもつい口にしてみたくなる魅力にあふれているから、思わず手が伸びちゃったみたいです。)